土地明渡請求
所有する土地を貸している場合、借主の契約違反でトラブルが起きる可能性があります。
こうした事態で、すぐに土地が明け渡されれば問題ありませんが、現実はスムーズにいかないケースが大半です。
借地人の権利は借地借家法によって保護されているためです。
そこで、今回は土地の明渡請求が可能なケースや流れ、注意点などを解説します。
土地明渡請求とは?
土地明渡請求は、賃貸借契約や使用貸借契約の解除・終了などを理由に、土地所有者が借主に対して土地の明け渡しを請求することです。
代表的なケースとして、賃料の滞納による解除などがあります。
明渡請求では、法律に基づいて借主に土地を明け渡してもらわなければなりません。
仮に法律を無視し、自力で土地などを利用できないようにして借主を追い出した場合、土地所有者が罰せられる可能性があります。
必要な法律知識や手続きは理解した上で、弁護士などの専門家にも相談しながら請求は行いましょう。
2つの明渡請求の方法について
明渡請求には、主に以下の2つの請求方法があります。
① 交渉での明渡請求
借主との交渉や話し合いによって明渡請求を行う方法です。
あくまでも任意で土地の明渡しを求める方法ですので、法律に基づく明渡請求とは異なり強制力はありません。
しかし、この時点で相手が明渡しに応じれば、裁判で負担となる費用や時間などを削減できます。
② 法律に基づく明渡請求
法律に基づいて強制的に土地の借主に対して土地をを明け渡させる方法です。
確実性の高い明渡請求の方法ですが、裁判や手続きなどで費用や時間が掛かります。
土地の明渡請求ができる主なケース(賃貸借契約解除の場合)
土地の明渡請求は、賃貸借契約や使用貸借契約の終了や解除の原因がある時に、借主に対して明け渡しを求めることができます。
ここでは賃貸借契約の解除の原因について解説します。
① 賃料不払いがある場合
地代の支払いの滞納が長期に及んでおり、当事者間の信頼関係を破壊する程である場合には賃貸借契約を解除することができます。
短期の滞納のみを理由とした解除は、裁判において、解除が無効とされる可能性が高いため注意しましょう。
② 賃借権の無断転貸や無断譲渡がある場合
民法612条では、賃貸人に無断での、不動産の又貸し(無断転貸)や借用する権利を第三者に譲渡すること(無断譲渡)を禁止しています。
したがって、無断転貸や無断譲渡があった場合には、賃貸借契約解除が認められることがあります。
③ 用法違反がある場合
借地人が用途制限などの特約に違反して、無断で建物の用途・用法等を変更した場合も賃貸借契約解除で明け渡しを請求できる可能性があります。
こちらも当事者間の信頼関係を破壊するおそれがある場合において、土地賃貸借の解除が認められるケースがあります。
④ 無断増改築がある場合
借地人が無断で特約に違反し増改築を行った場合も、賃貸借契約の解除が有効とされやすくなります。
特に土地の賃貸借が一時的な使用目的であるケースでは、借地借家法の適用がないため、特約違反の場合における無断増改築での契約解除が認められやすいでしょう。
⑤その他の場合
その他の契約解除の要因として、以下のようなケースがあります。
- ・暴力団排除条項(暴排条項)違反がある場合
- ・権利を持たない第三者が不動産を不法占拠している場合
- ・借地人が土地の保管義務に違反している場合
土地明渡までの主要な流れ
土地の明け渡しを実現させるためには、法的な手続きに沿って請求を行い、借主に明け渡させる必要があります。
明け渡しまでの主要な流れは以下のようになっていますので、確認しておきましょう。
1.内容証明による催告や交渉
借主と連絡が可能な場合には、まず裁判外で交渉を行うことで解決を図ります。
この時点で解決できれば費用や時間を大きく節減できます。
一般的には内容証明郵便で、賃料催告や賃貸借契約の解除などを求める意思を示し、証拠として残しておきます。
2.物件や現況の調査
弁護士などと一緒に現地の物件の調査を行います。
借主がいる場合には、そこで話し合いを行うケースもあります。
3.占有移転禁止の仮処分
借主が行方不明で知らない占有者が土地にいる場合、占有移転禁止の仮処分の申し立てを行っておけば、借主以外の人間がいても退去させることができます。
4.明渡請求訴訟・賃料請求
交渉や話し合いによる解決が難しい場合には、裁判所に明渡請求訴訟や賃料請求を行っておきます。
判決で請求が認められれば明け渡しとなります。
5.強制執行による明渡
裁判で明け渡しの判決が出た後も借主が退去しない場合には、強制執行によって明け渡しが行われます。
早期に明け渡し手続きを行い、経済的損失を減らしましょう!
賃料未払いや用法違反等のトラブルは、早期に明け渡し手続きを実行しないと経済的な損失が大きくなってしまう可能性があります。
そのため、トラブルが起きた際は、なるべく早い段階で弁護士などの専門家に相談し、正しい手順や方法で土地明渡請求を行いましょう。
