不動産会社様
中小規模の不動産会社こそ弁護士事務所との顧問契約が必要
会社が事業を行うに当たっては、契約書チェックや労務管理などの法務面でのフォローが大切です。
大企業では法務部を設けていて、弁護士資格を有している人を採用していることもあります。
しかし、法務部門は、会社に直接利益をもたらす部署ではないことから、中小企業の多くでは、法務部門を設けていなかったり、担当者はいても総務や経理などと兼任していたりすることが多いと思います。
その様な会社にとっては、法務部門の機能をアウトソーシングすることが有効です。
具体的な手段としては、弁護士事務所と顧問契約を結び、必要な時にすぐに相談に応じてもらえる体制を作っておくことです。
不動産業、宅地建物取引業は法的トラブルに巻き込まれやすい
不動産業、宅地建物取引業では、とりわけ、法務面でのフォローが大切になります。
不動産の売買、賃貸、交換、仲介のいずれの場面でも複雑な法律の知識が必要です。
もちろん、宅建業では従業員のうち5人に1人以上の宅地建物取引士の設置が必須になっているので、法律知識のある優秀な社員を抱えている会社も多いと思います。
ただ、一旦法的トラブルが発生したら、どう対処したらよいのか。
あるいは、法的トラブルが発生しないようにするにはどのような予防策を講じたらよいのか。
といったことまで精通している社員はまれだと思います。
不動産取引は金額が大きいだけに、一旦法的トラブルが発生すると、損害賠償額も大変な額になりがちです。
不動産会社が相手から多額の損害賠償請求を求められた場合はもちろんのこと、相手に多額の請求をする必要がある場合も、会社のキャッシュフローにも悪影響を及ぼし、事案によっては会社の資金繰りを急激に圧迫して、経営自体が成り立たなくなる可能性もあると思います。
その様な事態を避けるためには、不動産取引におけるリスクを精査して、予防的措置を講じ、実際に法的トラブルが発生してしまった場合でも初期の段階で素早く対処することで、被害の拡大を防ぐことが大切です。
こうした体制を整えるには、社内に法務部を設けて弁護士を中心とするチームを結成するのが理想ですが、多くの中小企業ではそのような体制を整えることは難しいと思います。
そこで、弁護士事務所と顧問契約を結び、必要な時にすぐに相談に応じてもらえる体制を整えておくことが有効と言えるのではないでしょうか。
不動産会社が弁護士事務所と顧問契約を結んだ場合に受けられるサービスの一例
不動産会社が弁護士事務所と顧問契約を結んだ場合に受けられるサービスの一例を紹介します。
不動産売買契約における事前のリスク判断
- ・不動産会社が買主側の場合は、売買の検討段階で、顧問弁護士に登記簿や権利関係など様々な資料を確認してもらい、取引において起こり得るリスクについての助言を受ける。
- ・不動産会社が売主側の場合は、契約不適合責任の規定を踏まえ、売主として負担する可能性のあるリスクに対応した売買契約書や重要事項説明書の作成についての助言を受ける。
- ・競売物件を仕入れる際に、現況調査報告書、評価書、物件明細書などを顧問弁護士に確認してもらい、考えられるリスクについて助言を受ける。さらに、競売物件を落札し、代金納付をしたのに元の所有者が退去しない場合の対処法について助言を受ける。
不動産売買契約締結後に法的トラブルが発生した場合
- ・不動産売買契約が解除されたり、不成立になったりした場面における手付金返還、違約金請求などについて助言を受ける。
- ・不動産売買契約後の契約不適合責任関係のトラブルについて助言を受ける。
不動産賃貸業や不動産管理業における事前のリスク判断
- ・不動産会社が貸主側であれば、貸主として負担する可能性のあるリスクに対応した不動産賃貸借契約書や重要事項説明書の作成についての助言を受ける。
- ・定期借地契約や定期借家契約といった特別な形式の契約を締結する際に、契約書の記載事項について、あらかじめ顧問弁護士のチェックを受けることにより、後に方式違背があると指摘されることを防ぐ。
不動産賃貸業や不動産管理業において法的トラブルが発生した場合
- ・賃料、管理手数料が未払いの場合に、早い段階で顧問弁護士が対応することで債権回収が不能となる事態を防ぐ。
- ・悪質な入居者やテナントへの対応に苦慮している場合に早い段階で顧問弁護士に対処してもらう。
- ・賃料改定を求められている場合に適切な賃料の額について顧問弁護士の助言を受ける。
- ・漏水事故や天災による破損など賃貸物件における様々なトラブルについて顧問弁護士の助言を受ける。
- ・敷金の返還や原状回復をめぐるトラブルについて顧問弁護士の助言を受ける。
不動産仲介契約におけるトラブルへの対応
- ・依頼者が法的トラブルを抱えている場合におけるリスクの判断などについて顧問弁護士の助言を受ける。
- ・依頼者からのクレームが入り、対応に苦慮している場合に顧問弁護士の助言を受ける。
- ・仲介手数料が回収できない場合に速やかに顧問弁護士に相談し回収を図る。
企業が弁護士と顧問契約を結んだ場合に受けられるサービスの一例
不動産会社に限らず、企業と顧問契約を結んだ弁護士は次のような案件にも対応しています。
インターネット上の誹謗中傷への対応
最近では、口コミサイトの影響力が大きくなっています。
口コミサイトにマイナスの口コミが記載されると、その内容が事実に反していても、口コミを読んだ人が信用してしまい、売り上げに影響が出てしまうことがあります。
自社で口コミサイトに対して事実ではないと主張して削除を求めても、応じてもらえないケースが多いようです。
そのような場合は、顧問弁護士が関与することで、名誉毀損等に当たることを主張して、速やかに削除してもらうことも可能です。
また、あわせて、誹謗中傷を行っている者を特定して損害賠償請求を求めることもできます。
従業員の労務管理や労務トラブルへの対応
主に会社と従業員の間でトラブルになった場合は、顧問弁護士は、会社側の立場から対応します。
例えば、従業員側から、
- ・未払い残業代請求
- ・パワハラ、セクハラなどのハラスメント関係の損害賠償請求
- ・労働災害等の損害賠償請求
などを受けている場合は、相手方の言い分に分があるなら、早い段階で解決する必要があります。
従業員側の正当な請求を放置していたら、労働者側にも弁護士が付いたり、外部の労働組合が介入したり、裁判に発展したりと、大事になりがちです。
そのような労務トラブルが発生した場合はもちろん、顧問弁護士が対処しますが、そもそも、労務トラブルが起きないように日頃から顧問弁護士のアドバイスを受けることも大切です。
また、問題社員への指導や解雇を検討する場合も、対応を間違えると、裁判などに発展しかねないため、顧問弁護士のアドバイスを受けながら対応することが大切です。
従業員向け研修会の開催
従業員向け研修会を開催することも顧問弁護士の重要な役割です。
不動産業界の場合は、従業員全員が宅建士並みの法的知識を有していることが望ましいです。
不動産業界に詳しい顧問弁護士なら、
- ・不動産取引でよくあるトラブルやその対処法
- ・不動産取引関係の判例の事例の紹介
- ・民法などの重要な法改正についての情報提供
など、不動産業界のニーズに沿った研修会を開催することができます。
相談しやすい顧問弁護士の選び方
実際に弁護士と顧問契約を締結する場合には、次のような点に注意しましょう。
不動産業や宅地建物取引業の顧問弁護士の経験があるかどうか
弁護士にも得意分野と不得意分野があります。
企業法務の弁護士にしても、得意な業界とそうではない業界があります。
宅建業の場合はそもそも、依頼者が宅建士の資格を有しているなど、専門的な法律知識を有していることが多いわけですから、依頼者を上回る知識やアドバイスを提供できる弁護士でなければ意味がありません。
緊急のトラブルなどにすぐに連絡が取れるか
不動産業界は水曜日が休みで、土日は営業していることが多いと思います。
弁護士が土日に全く対応してくれないと、肝心な時に対応が遅れてしまうこともあります。
担当の顧問弁護士が休みの日でも、他の弁護士などに対応してもらえるのかどうかもチェックしましょう。
そのためには、複数の弁護士が在籍している事務所の方が安心と言えます。
その他、素人にも分かりやすい言葉で説明してくれるか、親切な人であるかどうかなど、顧問契約を結ぶ前に実際に弁護士と話すことが大切です。
