再開発の補償金請求について
駅前などで再開発が行われる場合、再開発区域内の地権者は、市街地再開発組合から補償金を受け取ることができます。
しかし、補償金の額の少なさに困惑する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、駅前で事業を営んでいる方は、補償金だけでは営業に対する損失の補償として足りないと感じる方もいらっしゃるはずです。
このような場合は、再開発の補償金請求に詳しい弁護士に相談し、補償金の増額交渉を求めるべきです。
目次
1.第一種市街地再開発事業とは
第一種市街地再開発事業とは、木造建築物などが密集していて、土地が有効に活用されていない地区を対象にこれらの木造建築物などを取り壊したうえで、複合ビルや公共施設を整備し、都市機能の更新を図る事業のことです。
再開発地区内の地権者は、一旦、土地や建物を手放すことになりますが、権利変換後に複合ビル等の敷地の共有持分や借家権を取得することもできます。
また、敷地の共有持分や借家権を取得せずに、権利を手放すこともあります。
いずれの場合でも、地権者は一定の損失を被ることから、第一種市街地再開発事業を行う市街地再開発組合に対して、補償金を請求することができます。
2.第一種市街地再開発事業における補償金の種類
第一種市街地再開発事業における補償金は次の2種類があります。
2.1 法91条補償金(資産に関する補償)
再開発事業区域内の宅地や建物に関する権利を失い、かつ、権利変換後にこれらの権利に呼応した複合ビル等の共有持分や借家権を取得しない地権者が受け取ることができる補償金です。
土地や建物を手放すことに対する補償金(資産に関する補償)の意味があります。
2.2 法97条補償金(通損補償)
再開発事業区域内の宅地や建物に関する権利を失うものの、権利変換後にこれらの権利に呼応した複合ビル等の共有持分や借家権を取得する地権者が受け取ることができる補償金です。
こちらの地権者は、複合ビル等の敷地の共有持分や借家権を取得できるにしても、一旦、再開発事業区域内の宅地や建物から立ち退くことにより、引っ越し費用などの様々な損失を被ることになるため、その損失の補償を求めることができるわけです。
これを通損補償と言いますが、補償額は、一律に決められるものではなく、地権者の状況により補償内容は異なってきます。
例えば、営業を営む事業者であれば、営業に対する補償も必要になりますが、一般の居住者に対しては営業補償は必要ありません。
そのため、市街地再開発組合と地権者が協議により価額を決定します。
3.補償金の額の算出方法
地権者が多数いる場合は、補償金の額は、地権者の権利に対応して平等に支払うことが求められます。
特定の地権者に有利になるような形で支払うことは認められていません。
また、公共事業として行われる場合は、公共事業ごとに補償金の額が異なっていると不公平になるため、全国統一の基準が必要です。
そこで、昭和37年6月に「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」が閣議決定されて、全国統一の損失補償制度が体系化されることになりました。
この要綱に基づいて作られたのが「全国用地対策連絡協議会基準(用対連基準)」です。
用対連基準は難解で、一般の人には理解が難しいため、市街地再開発組合から委託を受けた補償コンサルという専門家が計算して、実際の補償金の額を決めるのが一般的です。
4.補償金の額について交渉できるのか?
市街地再開発組合側の補償コンサルが示した補償金の価額に不満を持つ地権者もいるでしょう。
この場合、地権者は補償金の価額について交渉することができるのでしょうか?
4.1 法91条補償金(資産に関する補償)の場合
法91条補償金(資産に関する補償)の価額は、権利変換計画を発表する段階で公表されます。
その金額に不満がある場合は、2週間の縦覧期間内に意見書を提出しなければならないものとされています。
意見書を採用するかどうかは、市街地再開発組合側が決めますが、不採択となった場合は、30日以内に収用委員会にその価額の裁決を申請することができます。
収用委員会が裁決により価額を決定した場合は、原則としてその価額が支払われることになります。
地権者が受け取りを拒否したとしても、供託する形で支払いがなされます。
収用委員会の裁決に納得できない場合は裁判で争う方法もありますが、裁判を起こす意義があるのかどうかも含めて、弁護士に相談すべきです。
4.2 法97条補償金(通損補償)の場合
法97条補償金(通損補償)については、法97条2項により、市街地再開発組合と地権者が協議しなければならないと定められています。
つまり、地権者側は、補償金の価額に関して交渉する余地があるわけです。
ただ、市街地再開発組合側は、明渡しの期限までに協議が成立しない場合は、審査委員の過半数の同意を得て決めた価額か、市街地再開発審査会の議決を経て定めた価額を支払う形で交渉を打ち切ることもできます。
地権者側が受け取りを拒否しても、補償金の価額を供託する形で支払いがなされます。
もちろん、地権者側は収用委員会に補償額の裁決を申し立てることもできますが、ここまで揉めた場合は、解決まで長い時間とコストがかかってしまいます。
やはり、交渉の段階で、有利な価額を引き出すことが肝要で、そのための交渉は、ご自身でやるのではなく、専門の弁護士に依頼したほうが成功率が高いと言えます。
5.補償金の額に関する最高裁判例
どの程度の補償金を請求できるのかについては、最高裁判例が参考になります。
こちらは、土地収用法の事例ですが、都市再開発法に基づく再開発でも、公益目的で私権が制限される構造は変わらないため、同じように考えることができると解されています。
以下、判例文を引用します。
参考
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52033
注目すべき点は、「完全な補償」を求めることができるという点です。
補償金の額について交渉する際は、この考え方に則って、補償が足りない分については、数字や根拠を示したうえで、強気の姿勢で交渉することが肝要と言えます。
このような交渉は、地権者自身で行うことは難しいですし、いずれ裁判に発展する可能性もあることや、裁判で争っても構わないという覚悟を示す意味でも、弁護士に代理で交渉してもらうように依頼するのが最善と言えます。
6.大阪淀屋橋近辺での再開発補償金請求はみやこ法律事務所へご依頼ください
大阪淀屋橋近辺で再開発の補償金について、悩んでいる地主の方は、みやこ法律事務所にご相談ください。
みやこ法律事務所の代表弁護士は、自ら不動産売買や不動産収益物件の運用経験も有しており、地主の立場を身をもって知っています。
地主様の悩みごとに共感できますし、法的な問題以外にもよりよい解決策を自らの経験に基づいて提案することもできます。
再開発の補償金請求を初めとする不動産関係のお悩み事は、みやこ法律事務所へご相談ください。
