更新料の算定基準について
借地契約の更新に際して、更新料を支払うべきかどうかに関しては、法律上の決まりがあるわけではないため、明確な更新料の算定基準も存在しません。
ただ、借地権価格の5%前後が一般的な相場とされており、一応の目安になります。
地主から請求された更新料の額が高すぎる場合は、値下げ交渉を行う余地もありますが、更新料の額をめぐってトラブルになると、借地契約の更新を拒否されてしまうこともあるので、早めに弁護士にご相談ください。
目次
1.借地契約の更新料の支払い義務がある場合
借地人に更新料の支払い義務が生じるのは、土地賃貸借契約書の条項から、更新料が地代と同様の位置づけになっており、具体的な金額が決まっているなど、支払うのが当然であることが読み取れる場合だけです。
土地賃貸借契約書に更新料に触れた条項があったとしても、「相場相当の更新料」といった取り決めのように更新料の金額を算定できない場合は具体的権利とは言えないため、更新料の支払い義務が生じないこともあります。
2.借地契約の更新料の算定基準は存在しない
借地人が借地上の建物の増改築を行ったり、借地権を譲渡する際は、借地借家法や民法の規定の規定により、地主の承諾が必要になる旨が定められており、その承諾に際して、承諾料を支払うのが一般的とされています。
そのため、裁判所でも、承諾料の算定基準を用意していますし、裁判所の手続きを利用せず、当事者同士で話し合う場合でも、裁判所の算定基準を承諾料の相場とすることが多いです。
一方、更新料の支払いについては、最高裁は慣習とは言えないとの立場を示しています(最判昭和51年10月1日 集民 第119号9頁)。
そのため、裁判所は更新料の算定基準も用意していません。
当事者同士の話し合いにより、更新料を決める場合でも、確固たる算定基準があるわけではなく、当事者同士の話し合いにより決めるしかないことになります。
3.借地契約の更新料の一般的な相場は借地権価格の5%前後
借地契約の更新時に地主と借地人との間の契約により、更新料の支払いを取り決めているケースは実際には多くあり、一定の相場もあります。国土交通省も次のような見解を示しています。
契約更新料は、借地人が地主と円満な話合いのもとで契約を合意更新する場合に、更新料を地主に支払うものである。
法律上は必ずしも支払う必要はないが、借地人側としても期間が満了しても土地を継続使用できるということから、更新時に一定の金銭を支払う慣行ができた。
しかし、契約更新は20年ごとに巡って、更新料の額は借地権価格の5%前後であるため、地価が上昇すれば更新料も上昇するので、その都度トラブルになりかねない。
その他にも建替時の建替え承諾料の支払い、借地権を第三者に譲渡する場合の譲渡承諾料など、借地人にとっても煩わしいことが多かった。
国土交通省の見解より引用
引用元 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000127.html
つまり、更新料の額は借地権価格の5%前後というのが、一般的な相場になっていると言えます。
4.一般的な相場に基づく更新料の算定基準
借地権価格の5%前後という更新料の一般的な相場に基づいて、更新料を求める場合は次の計算式を用います。
このうち、更地価格は、国税庁が毎年7月に公表する財産評価基準書を基に算出します。
相続、遺贈、贈与により取得した土地について、相続税、贈与税の計算で用いる価格を決める際の基準となるもので、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類の計算方法があります。
路線価方式の場合は、土地が接している道路に路線価が示されているため、「路線価×土地の面積」によって、土地の価格を決めます。
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法ですが、その土地の固定資産税評価額に評価倍率表で示された倍率をかけることで土地の価格を算出します。
なお、路線価をもとに計算された土地の評価額は、相続税評価額で公示地価の8割程度に抑えられています。
そのため、土地価格のおおよその目安を算出する場合は、その土地の評価額に1.25倍を掛けます。
借地権割合は、路線価と共にA~Gのアルファベットが示されているので次の表で当てはめて確認します。
| A | 90% |
|---|---|
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
例えば、土地の路線価として「500C」と示されていた場合は、その土地1平方メートル当たりの価格は、 500千円 = 50万円 になります。
そして、借地権割合は、 C = 70% となります。
土地の面積が100平方メートルだった場合の更新料の相場は、次のようになります。
約219万円が更新料の相場ということになります。
参考サイト 国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
https://www.rosenka.nta.go.jp/
5.借地契約の更新料が高い場合は値下げ交渉の余地はあるのか?
更新料の支払い義務は、法律や慣習に基づくものではなく、当事者同士の取り決めにより生じるものです。
そのため、どの程度の額の更新料を支払うかも、正確な算定基準が存在しているわけではなく、当事者同士の交渉により決めてよいものになります。
借地権価格の5%前後が相場とされていますが、この相場とかけ離れた更新料を地主から請求されることも珍しくありません。
このような場合は、借地人としては値下げ交渉を求めることも可能です。
また、更新時期までに話し合いがまとまらなかったとしても、借地契約が更新できなくなってしまうことは基本的にありません。
ただ、「更新料の支払が賃料の支払と同様、更新後の賃貸借契約の重要な要素として組み込まれている」と言えるケースでは、更新料の不払いが借地契約解除の原因になってしまうこともあるため、注意が必要です。
6.更新料の額をめぐってトラブルになりそうなときは弁護士にご相談ください
借地契約の更新料の支払いは、数十年に一度といった長いスパンごとに発生するため、前回更新時の情報が残っていなかったり、世代が変わっていたりすると、地主も借地人も更新料の額をどのように算定したらよいのか分からないことも多いため、トラブルになりやすいです。
借地契約書に更新料の算定基準が具体的に記載されている場合は、原則としてその計算により算出した更新料を支払う必要がありますが、取り決めを行ったのがバブルの真っ最中で土地の価格が上昇していた時期だとすると、高額に設定されてしまっていることも考えられます。
このような場合は、現在の相場に合わせて、更新料の算定基準を決め直すといった交渉の余地もあります。
ただ、更新料の額をめぐってトラブルになってしまうと、更新料の金額で合意できず借地契約の更新を拒否されてしまうこともあります。
地主との交渉が難航しそうな場合は、早めに弁護士にご相談いただくことが借地権を維持するためにも重要です。
