賃借人と交渉ができない場合の家賃回収手続き
滞納家賃を支払ってもらいたくても、賃借人が賃貸物件にいない場合や居留守を使っていて交渉にも応じてくれない場合もあります。
このような場合の家賃回収手続及び、賃借人と交渉ができない場合の予防策について解説します。
目次
賃借人と交渉ができない場合とは
滞納家賃を支払ってもらうためには、賃借人と交渉し支払ってもらうのが原則です。
しかし、賃貸人が該当する部屋を直接訪問しても賃借人と会うことができず、交渉すらできないこともあります。
例えば、次のような場合です。
賃借人が部屋にいないことが多い場合
賃借人がほとんどの時間帯で外出しており、部屋には寝に帰るだけの状態の場合です。
深夜の時間帯など、非常識な時間帯に賃貸人が押しかけることは法的に問題があるため、必然的に賃借人と直接会える時間が少なくなってしまいます。
また、荷物を置くだけの部屋として借りていて、ほとんど住んでいない場合もありますし、住んでいたけど入院等によって、部屋に帰れない場合もあります。
居留守を使っている場合
賃貸人が訪問しても、賃借人が部屋を開けず、居留守を使っている場合もあります。
このような場合でも、賃貸人が合鍵を使って中に強制的に入ることは基本的にできません。
居留守を使っている場合に中に入るためのテクニックとしては、警察に「孤独死の可能性がある」と相談したうえで、警察官と一緒に中に入る方法があります。
ただ、明らかに居留守と分かる場合は、このテクニックは多用できません。
賃借人と交渉ができない場合の家賃回収手続き
賃借人と直接交渉ができない場合の滞納家賃の回収方法について解説します。
督促状を渡す
賃借人と交渉ができない場合は、督促状により滞納している家賃の支払い請求をするしかありません。
督促状を直接手渡すことは難しいことも多いため、ポストに投函するか郵送しましょう。
督促状には次のような点を記載しておきます。
- 請求金額
- 滞納家賃のほか、支払いが遅れている共益費、水道光熱費などもあわせて請求します。
- 支払期限
- 郵送した日から一週間程度で具体的な日付を記載するのが望ましいです。
- 法的措置の予告
- 支払期限までに支払わない場合は法的措置を講じる旨を予告しておきます。
また、遅延損害金、弁護士費用も発生する旨もあわせて記載しておきましょう。
内容証明郵便を送付する
督促状を送付しても滞納家賃が支払われない場合は、内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便は後に裁判手続に進んだ場合の証拠になります。
賃貸人自身が作成して送付することもできますが、裁判手続に進む場合は弁護士への依頼が必要になることも多いため、この段階で弁護士に依頼した方がよいでしょう。
内容証明郵便に記載すべき事項は、督促状の記載事項とほぼ同じです。
賃借人の財産を確認する
内容証明郵便を送付しても、滞納家賃の支払いに応じない場合は、裁判手続により滞納家賃を回収するしかありません。
その前提として、賃借人の財産がどの程度あるのか確認します。
財産がなかったり、無職で収入がない場合は差し押さえができないためです。
賃借人の財産の調査を一般の方が行うことは難しいため、弁護士に依頼すべきです。
裁判手続の選択
滞納家賃回収のための裁判手続としては、「支払督促」「少額訴訟」「通常訴訟」の3つがあります。
支払督促
支払督促は、裁判所から督促状を送付してもらう方法です。
賃借人から異議申し立てがない場合は、仮執行宣言を付することができ、これを債務名義として強制執行を行うことができます。
少額訴訟
滞納家賃を含めて請求額が60万円以下の場合に、簡易裁判所に提起できる訴訟です。
原則として1回の期日で審理を終えて判決が出されるため、手続的な負担が軽いです。
確定判決を得た場合は、強制執行を行うことが可能になります。
通常訴訟
滞納額が多額に上る場合や賃借人側が争う姿勢を示している場合は、法廷での通常訴訟を行うしかありません。
通常訴訟を提起する場合は、滞納家賃の支払いを求めるだけでなく、立ち退き請求も同時に行うことができます。
賃借人と交渉ができず滞納家賃が発生することを防ぐには
賃借人と交渉ができず滞納家賃が発生してしまうことを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
予防策を解説します。
家賃を自動引き落としにする
家賃を自動引き落としにすれば、賃借人が支払いを忘れたとか、面倒くさがっているために支払わないといったトラブルを防ぐことができます。
もちろん、預金残高がない場合は、自動引き落としができませんが、クレジットカード払いによる自動引き落としならば、そのような事態も回避できます。
連帯保証人を付ける
賃借人と滞納家賃について交渉ができない場合に備えて、賃貸借契約時に連帯保証人を立ててもらいましょう。
賃貸借契約の段階で、連帯保証人と連絡を取り、連帯保証の意思があるかどうかや収入や資産があるか確認しておきましょう。
身元のしっかりした連帯保証人がいれば、賃借人と連絡が取れない場合でも、連帯保証人に滞納家賃の催促をすることができます。
家賃保証会社を付ける
連帯保証人を立てられない場合は、賃借人に家賃保証会社との賃貸保証契約を締結してもらいましょう。
家賃保証会社を付ければ、賃借人が家賃を滞納した場合は、家賃保証会社が立て替え払いをしてくれます。
滞納家賃の回収も家賃保証会社が行うため、賃貸人が回収のために動く手間も省けます。
まとめ
賃借人と交渉ができない場合の家賃回収手続きの流れと、予防策について解説しました。
交渉に応じない賃借人から滞納家賃を回収することは困難なことも多いですし、精神的なストレスにさらされがちです。
賃借人と滞納家賃に関して交渉ができない場合は、早めに弁護士などの専門家に相談してください。
