立ち退きを求められた
現在居住している賃貸物件で大家から立ち退きを求められた場合、居住者(賃借人)はどのように対応すればいいでしょうか。
実は、大家が賃借人に立ち退きを求めるにはさまざまな条件を満たす必要があり、そう簡単に立ち退きを求めることはできません。
ここでは、大家が入居者に立ち退きを求める条件と、立ち退きを求められたときの対応について詳しくご紹介します。
目次
立ち退きを要求できる正当な理由とは
大家が賃借人に対し、正当な理由なく立ち退きを求めることはできません。
賃借人が大家の勝手な都合で住まいを失うことがあってはならないからです。
立ち退きを要求できるような「正当な理由」として次のような例があります。
- ①建物の老朽化
- ②賃借人の契約違反
- ③大家の個人的な事情
それぞれ詳しく説明します。
①建物の老朽化
大家が立ち退きを求める理由で特に多いのが建物の老朽化です。
「災害により倒壊の恐れがある」といった場合がこれに該当します。
「築年数が経過し、建築基準法などで求められる基準を満たしていないから」「建物全体が古いから」などの理由では立ち退きを求めることはできません。
②賃借人の契約違反
賃借人が入居時に締結した賃貸借契約に違反する行為があった場合、大家が賃借人に立ち退きを要求できます。
賃借人の契約違反として次のようなケースがあります。
- ・ペット禁止の物件にもかかわらず、内緒でペットを飼育していた
- ・騒音による迷惑行為で再三にわたる注意にもかかわらずに改善されない
- ・家賃の滞納が続いている
とくに問題になりやすいのが「家賃の滞納」です。
具体的に何か月間家賃を滞納したことが「信頼関係を損なった」とされるのか、裁判例でも判断が分かれています。
2か月の家賃滞納で信頼関係が損なわれたとするものもあれば、4か月家賃を滞納しても信頼関係は損なわれてないとする裁判例もあります。
そのため、大家との信頼関係が損なわれ、尚且つ立ち退きを要求される可能性があるのは、家賃の滞納が3か月程度続いた場合が一応の目安になるでしょう。
他の「賃借人の契約違反」についても同様で、「賃借人と大家との信頼関係が失われている」ことがポイントです。
騒音も家賃の滞納も1回だけなら大家との信頼関係が損なわれたとは言えず、「正当な理由」にはなりません。
騒音について再三にわたる注意を無視したり、ペットの飼育を続けたりして、大家が入居者に対し不信感を募らせている状態になってはじめて「賃借人の契約違反」になり、立ち退きを求められる正当な理由になります。
③大家の個人的な事情
一般的に賃貸借契約は「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。
多くの賃貸物件は普通借家契約ですが、定期借家契約は定められた期日までに賃借人は引っ越ししなければなりません。
転勤中だけ自宅を賃貸に出していた大家が戻ってくる場合がこれに該当します。
立ち退き料を請求できる可能性がある
建物の老朽化などの理由があって立ち退きせざるを得ない場合、大家に対し立ち退き料を請求できることがあります。
これは大家の都合で入居者が住まいを失うことに対する補償と、引っ越し費用や新居の契約にかかる費用(敷金、礼金など)を補填するという意味合いもあります。
立ち退き費用の相場は家賃の6か月分くらいとされていますが、法律で決まっているわけではないので、少ないと感じたら値上げを交渉することもできます。
立ち退き料を請求できないケース
立ち退き料は請求できないケースもあります。
次のようなケースでは請求できないので注意しましょう。
賃借人の契約違反による立ち退き
立ち退き料を支払うのは大家側の都合による場合に限るので、賃借人の都合で退去する場合は、立ち退き料は支払われません。
立ち退き料を受け取らないことで合意している
「立ち退き料は受け取らない」という趣旨の契約をしているケースです。
これに合意しているかどうかわからないときは賃貸借契約書を確認すると良いでしょう。
ただし、騙されたり脅されたりして立ち退き料を受け取らない契約に合意してしまった場合は、その契約を取り消すことができます。
定期借地契約により契約期間が決まっている
定期賃貸借契約は居住できる期限が決まっています。
契約期間満了につき立ち退きすることが決まっているので、大家に立ち退き料を要求することはできません。
立ち退きを求められたときは弁護士にご相談ください
大家から突然立ち退きを求められたとき、入居者は住まいを失う可能性があり、当然ながら簡単に同意することなどできないはずです。
とくに騒音や迷惑行為といった入居者の契約違反による立ち退きを要求された場合、入居者の契約違反行為に当たるのか疑わしく、大家の立ち退き要求は不当だと思われる方もいるかもしれません。
その場合、入居を続けるには大家との交渉が必要です。
大家と交渉する前に弁護士にご相談ください。
その際、賃貸契約書と、大家から届いた立ち退きを求める通知書をご用意いただけるとスムーズに対応できます。
お気軽にお問い合わせください。
