管理会社とのトラブル
マンション管理会社とのトラブルは増えている?
マンション管理会社と管理組合の間で、マンション管理に関してトラブルになる事例が増えています。
近年、マンション管理会社は人手不足、人件費の上昇に伴う収益性の低下に悩まされているため、マンション管理の品質が低下気味です。
一方で、管理組合は、居住者の高齢化などにより支払い能力が低下し、管理費用の値上げなどができない状況にありながら、これまでと同等の品質を求めています。
このような状況のため、マンション管理会社と管理組合の間でマンション管理をめぐるトラブルが起きやすくなっています。
マンション管理会社と管理組合の契約関係
マンション管理会社は、管理組合との間で締結した管理委託契約書に基づいて、マンション管理業務に携わっています。
マンション標準管理委託契約書の場合ですと3条に次のような業務が列記されています。
- 1、事務管理業務
- 管理組合の会計・出納(管理費、修繕積立金の徴収等)・維持修繕の企画調整・理事会支援業務・総会支援業務
- 2、管理員業務
- 受付・点検・立会・報告連絡業務等
- 3、清掃業務
- 日常清掃・定期清掃等
- 4、建物・設備等管理業務
- 建物等点検、検査・エレベーター設備の点検、整備・給水設備の点検、清掃・浄化槽、排水設備の点検、清掃・電気設備等の点検・機械式駐車場設備の点検
このように契約書に明記されている業務は、マンション管理会社がしっかりと行う必要があります。
業務を行っていない場合は管理組合から苦情を入れることができます。
一方で、管理組合としても、どこまでマンション管理会社がやってくれるのかを把握していなければなりません。
契約書に明記していないことをマンション管理会社に求めることはできません。
管理組合・住民がマンション管理会社に抱きやすい不満
管理組合や住民がマンション管理会社に対して抱きやすい不満をいくつか挙げてみましょう。
1、共有部分の清掃をしっかりやってくれない
共有部分の清掃は、標準管理委託契約書にあるとおり、マンション管理会社が行うのが基本です。
しっかり掃除できていない場合は、マンション管理会社に改善を求めるべきでしょう。
苦情を入れても改善されないばかりか、品質が下がる一方であれば、管理会社の変更を検討すべきことになります。
2、廊下の電気が切れているのにすぐに直してくれない
共用部分の電気設備のメンテナンス等は、標準管理委託契約書にもあるとおり、マンション管理会社が行うのが基本です。
契約書に明記されているのに対応してくれない場合は論外ですが、対応スピードが遅いために、管理組合や住民が不満を抱くことも多いようです。
3、住民同士のトラブルに対応してくれない
マンションの住民同士がトラブルになっているのにマンション管理会社が対応してくれないために、管理組合や住民が不満を抱くことがあるかもしれません。
しかし、住民同士のトラブルの解決は、基本的にマンション管理会社の業務ではありません。
当事者同士で話し合って解決するしかありません。
特に問題になりやすいのが上階からの漏水事故です。
例えば、上階の住民が洗濯機やお風呂などで水を出しっぱなしにしてしまい、下階が水浸しになる被害を受けたとしましょう。
そこで、上階の住民と下階の住民の間で示談交渉を行うことになった場合にマンション管理会社に示談交渉を任せることができるのでしょうか?
標準管理委託契約書では、マンション管理会社が「第三者との契約等に係る事務を行う」と言った記述もありますが、これはあくまでも共用部分の話で、室内における漏水事故のように専有部分でのトラブルの示談交渉は含みません。
よって、マンション管理会社に示談交渉を依頼することはできません。
このような事例では、交渉の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。
4、マンション管理費が高すぎるのではないか?
マンション管理費が高すぎるという不満の声が住民の間から起きることもあるでしょう。
管理組合としては、管理費の相場を調べて、明らかに高すぎるようであれば、マンション管理会社と交渉し値下げを求めるべきでしょう。
また、他の業者に見積もりを出してもらい、マンション管理会社の変更も検討すべきことになります。
マンション管理委託契約に基づく解約の申入れ
管理組合・住民が上記のような不満を抱いているのに、マンション管理会社が管理委託契約書に記されたとおりの仕事をしてくれない場合は、管理組合としてはマンション管理会社との契約を解除したいと考えることもあると思います。
では、マンション管理会社との契約の解除はどのように行ったらよいのか見ていきましょう。
1、マンション管理委託契約に基づく解約の申入れ
管理組合とマンション管理会社との間にはマンション管理委託契約が締結されています。
基本的な契約内容は国土交通省が公表しているマンション標準管理委託契約書に書かれていますので、このひな形をそのまま用いていることもありますが、修正されていることもあるので、実際の契約書を確認する必要があります。
標準管理委託契約書によれば、21条に「管理組合又はマンション管理会社は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。」と記されています。
この項目が実際の契約書にも記載されていれば、管理組合から3カ月前に解約の申入れを行うことで契約を終了させることができます。
この場合、マンション管理業務の空白が生じないように、契約終了時までに新たな委託先となるマンション管理会社が業務を開始することができるようにしておく必要があります。
2、マンション管理委託契約に基づく契約の解除
マンション管理会社は、善管注意義務と言い、管理組合から委託された業務を誠実に行う義務があります。
民法上の原則ですし、標準管理委託契約書5条にも明記されています。
マンション管理会社が管理委託契約上の義務の履行を怠っている場合は、上記の3カ月の猶予期間を設けずとも契約解除が可能です。
標準管理委託契約書でも、20条に次のような定めを設けています。
管理組合又はマンション管理会社は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。
この場合、管理組合又はマンション管理会社は、その相手方に対し、損害賠償を請求することができる。
まず、管理組合としては、マンション管理会社に契約どおりの義務を行うように催告し、それでも履行されない場合には契約解除ができるということです。
また、あわせて損害賠償請求も可能となっています。
この規定に基づく契約解除は、法的な判断が伴いますので、専門家である弁護士に依頼した方が交渉が進みやすいでしょう。
マンション管理会社との契約解除交渉は弁護士にご依頼ください
管理組合が、現在契約しているマンション管理会社と契約解除したいと思っても、マンション管理会社がすんなり応じてくれることは少ないでしょう。
一般に、管理組合は住民の集まりに過ぎません。
一方、マンション管理会社はプロですから、契約交渉の場でも、マンション管理会社が優位になりがちです。
管理組合側に法律に明るい人や交渉に慣れている人がいなければ、マンション管理会社側の言い分に押し切られてしまうことも考えられます。
このような場合は、管理組合としては弁護士に代理人になってもらうか、交渉の場に同席してもらうのがよいでしょう。
特に、マンション管理会社の管理業務の懈怠が、善管注意義務違反に該当していると考えられるような事案であれば、早い段階から弁護士に依頼することで、様々な証拠を押さえて、マンション管理会社との交渉を有利に進めることができます。
