賃貸人が亡くなった
アパートやマンションの賃貸人が亡くなった場合、賃貸借契約の内容や敷金、賃料の支払いどうなるのでしょうか。
そこで、本記事では賃貸人が亡くなった場合の借主への影響や相続時の賃料支払い、敷金返還についても解説します。
新しい賃貸人になった場合の注意点も解説しますので、ぜひ目をとおしてみて下さい。
賃貸人が亡くなった場合の影響とは?
賃借人が賃料を支払う相手、つまり賃貸人が亡くなると、賃借人には以下のような影響が発生する可能性があります。
- ① 亡くなった賃貸人の相続人が、新しい賃貸人となる
- ② 賃料の振込先が変更となる
- ③ 新しい賃貸人と賃料や契約の内容でトラブルになる
賃貸人が亡くなった場合、「賃貸人たる地位」は相続人に承継されます。
したがって、賃借人は遺産分割協議で決定した物件の相続人(つまり、新しい賃貸人)と、今後も賃貸借契約を継続することになります。
また、相続により新しい賃貸人となった場合、賃貸借契約の内容は従前とは変わらず、契約を結び直す必要もありません。
しかしながら、亡くなった賃貸人の預金口座が凍結された場合などに、新しい賃貸人から賃料の振込先変更を通知されるケースや、既存の賃料金額や契約内容に関して変更を求められるケースもあるでしょう。
相続開始された後の賃料支払いについて
賃貸人が亡くなり相続が発生すると、賃料の支払いをどうすれば良いか迷うケースもあります。
代表的な例として、亡くなった賃貸人の相続人が複数いる場合です。
相続発生の時点から遺産分割で物件を相続する人が決定する時点までの間、相続人全員がそれぞれの法定相続分に応じて分割して賃料を取得します。
しかしながら、賃借人が相続人全員に対して個別に分割された賃料を支払うのは手間であり、負担もかかります。
そのため、遺産分割で物件の相続人が決まるまでの間、相続人のうちから代表者一名を選んでもらい、代表者の口座に賃料全額を支払うようにする、ということが広く行われています。
遺産分割の結果、物件の相続人が決定した後、新しい賃貸人から「賃貸人変更通知書」などの書類が届くと思いますので、内容を確認して、賃料の振り込み先を確認しましょう。
通知が来ない、新しい賃貸人が分からない場合
前述のように通知や相続の連絡があれば、新しい預貯金口座へ振り込むことができます。
しかし、中には相続人が見つからないなどの理由で、通知や連絡が来ないケースもあります。
こうした場合でも、賃借人は賃料を支払い続けないと、後々、賃貸借契約を解除されてしまうリスクがあるため注意しましょう。
対策としては、法務局において、賃料を国に預けておく「供託」の手続きがあります。
供託は、家賃の支払い先等が分からない場合に賃料を預けることのできる制度です。
後日、新たな賃貸人が明らかになれば、その権利者は法務局から賃料を受け取ることができます。
支払い先が分からない場合でも、賃借人が賃料を供託しておけば、支払い義務を果たしたことになるのです。
敷金は返金してもらえるのか?
新しい賃貸人となった場合、賃借人は敷金を返還してもらえるのでしょうか。
結論としては、「賃貸人たる地位」の継承により敷金返還の債務も新しい賃貸人に相続されるため、賃貸借契約の終了時に、新しい賃貸人から敷金を返還してもらうことが可能です。
ただし、相続開始前の敷金と同様に、賃借人に未払賃料等の債務がある場合、その分は差し引かれて返金されます。
賃借人の行為が原因で物件に損傷がある場合も、敷金から修繕費用等が差し引かれるため気を付けましょう。
新しい賃貸人になった場合の注意点
賃貸人が変わった場合の注意点として、従前の賃貸借契約の内容に新しい賃貸人が納得しないケースも存在します。
例えば、既存の賃料では安すぎると判断して、月々の家賃の増額を求めてくる事例もあります。
どのように対応すればよいかわからない場合には、早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。
また、新しい賃貸人が賃借人の知らないうちに、第三者に対して賃貸物件を売却してしまう可能性もあり、物件の購入者が賃借人に立ち退きを求めてくるケースもあるかもしれません。
このような場合には、早急に弁護士などの専門家に相談してください。
賃貸人が亡くなった場合はすぐに対応を行いましょう!
賃貸人が亡くなった場合に起きる影響や賃料の支払い先、通知が来ない場合の対応や敷金についても解説しました。
賃借人は相続が発生しても賃料を支払い続けなければいけないため、上記を参考にしながらすぐに対応しましょう。
なお、賃貸人の変更でトラブルが発生した場合、不動産や法律の知識も必要になります。
みやこ法律事務所では、不動産・相続に関するトラブルの相談にも対応しておりますので、お困りの際にはぜひご相談ください。
