説明義務違反に関するトラブル
1、不動産売買の形態と説明義務を負う人
不動産売買は、売主と買主が直接取引する形態は少なく、多くの場合は、その間に宅地建物取引業者(以下、宅建業者)が入り、両者を仲介する形を取ります。
一般的に不動産屋さんと呼ばれる人たちのことです。
不動産は高額な財産で多くの人にとって一生で何度も取引するものではありません。
そのため、取引に際しては様々な情報を集めて慎重に判断することになるわけですが、その際に重要となるのが、売主と宅建業者からの情報です。
売主、宅建業者からでたらめな情報を提供されて、それを基に取引してしまうと、買主としては多大な損害を被りかねません。
そこで、法律や判例により、売主、宅建業者には、一定の説明義務が課せられています。
2、不動産売買における売主の説明義務
宅建業者が不動産取引を仲介するだけの場合は、不動産の所有者が売主になります。
売主はいわゆる不動産屋さんとは限らず、一般の個人だったり、宅建業とは関係ない法人だったりすることもあります。
こうした売主には、宅建業法上の説明義務はありません。
また、取引に関する一般法である民法にも、説明義務に関する規定はありません。
ただ、信義則上、売主にも一定の説明義務が課されることもあります。
購入の判断に際して重要な影響を与えると思われる事項については、売主は買主に直接伝えたり、宅建業者を介して伝える信義則上の義務があり、これを怠った場合、売主は買主に対して、不法行為責任や債務不履行責任を負う可能性があります。
3、宅地建物取引業者の説明義務
不動産取引においては、不動産の購入判断を左右する重要な情報の多くが、仲介者である宅建業者から提供されます。
そのため、宅建業法でも35条に重要事項説明という項目を設けており、宅建業者が買主に対して説明しなければならない「重要事項」を法定しています。
取引の対象となる不動産の基本情報の他、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の内容、建物状況調査の結果、私道に関する負担、水道・下水・電気・ガスに関する事項など多岐にわたります。
重要事項は口頭だけで説明しきれるものではないことから、宅建業者には、「重要事項説明書」という書面を買主に交付することが義務付けられているうえ、宅地建物取引士という資格者に詳しく説明させる義務もあります。
さらに、宅建業法47条1号には、重要な事実の不告知等を禁止する規定が設けられています。
35条の重要事項以外にも「買主の判断に重要な影響を及ぼすこととなる」事実を告げず、又は不実のことを告げる行為が禁止されています。
宅建業者がこれらの説明義務に違反した場合は、監督行政庁から指示及び業務の停止を受けたり、罰則を科せられます。
4、不動産売買における説明義務違反に関するトラブルとは
このように不動産取引においては、宅建業者に厳格な説明義務が課せられているため、ルールを遵守している宅建業者との取引であれば、トラブルは生じないはずですが、実際には、説明義務違反に関するトラブルが多いのが実態です。
売買契約時には宅建業者等からの説明を聞いて、買主としても問題ないと思って契約を締結しても、後になって、いろいろと問題が出てくることが多いようです。
例えば、次のようなトラブルがあります。
- ・建築基準法上の用途制限等に抵触するため、買主が想定していた使い方ができなかった。
- ・売買契約締結時に買主が認識していなかった地中埋設物や土壌汚染が発覚した。
- ・売主側が売買契約締結時に雨漏り履歴や浸水したことがあることを故意に隠ぺいしていた。
- ・建築確認申請がされていない違法建築だったがその説明がなかった。
- ・自殺等があった事故物件であったのにその説明がなかった。
このように、売買契約時に説明すべき事項を売主や宅建業者が説明していなかったり、故意に隠していたために、買主が知ることができなかったというような場合にトラブルが生じています。
5、不動産売買における説明義務違反に関する責任を追及するには?
宅建業者は、宅建業法や民法など不動産取引に関する法律や判例に精通しており、どこまでなら裁判で訴えられても責任を問われないかの線引きを熟知していることもあります。
そうしたプロの業者に対して、説明義務違反に関する責任を追及することは大変難しいのが実情です。
訴えを提起したとしても、売主や宅建業者の説明義務違反が認められず、請求を棄却されてしまったり、説明義務違反が認められても、損害賠償額を大幅に減額されてしまうことも珍しくありません。
こうした宅建業者等に対して説明義務違反に関する責任を追及するには、買主が自分自身で内容証明郵便を送付したところで、埒が明かないものです。
不動産トラブルに精通した弁護士に相談した上で、どのような形での責任追及が可能なのか、宅建業者との交渉で解決できるのか、裁判を起こすべきなのか等、よくよく戦略を考える必要があります。
責任追及が可能な場合は、宅建業者等に対して説明義務違反に基づき損害賠償請求をすると共に、宅建業法違反を理由に監督行政庁に対して行政処分を求めると言った対応も検討することになります。
特に法人の宅建業者が宅建業法47条1号の重要な事実の不告知等の禁止の規定に違反していた場合は、法人に対して一億円以下の罰金刑が科せられることもある旨が規定されています。(宅建業法84条)
こうした規定も持ち出しながら、宅建業者と如何に有利に交渉を進めていくかがポイントとなります。
6、説明義務違反に関するトラブルの解決はプロの弁護士へご相談ください
不動産売買における説明義務違反について、責任を追及する相手方は、一般的には宅建業者です。
宅建業者は、不動産取引のプロであると共に、宅建業法を初めとする法律や判例に精通していることも多いものです。
そんな宅建業者を相手に説明義務違反に関するトラブルを解決するには、相当の法律知識と経験が必要です。
弁護士なら誰でも解決できるわけではなく、不動産トラブルに精通した弁護士でなければ、難しいものです。
当事務所は、不動産売買における説明義務違反に関するトラブルを解決した実績が多数あります。
様々な対応策を検討したうえで、ご相談者様の納得のいく形での解決を目指します。
