土壌汚染に関するトラブル
1、土壌汚染の調査が必要な場合とは?
土壌汚染対策法や大阪府生活環境の保全等に関する条例などでは、有害物質を使用していた工場又は事業場の敷地だった土地の所有者等に対して、土壌汚染の調査をした上で、都道府県知事等に報告することが義務付けられています。
具体的には次のような場合です。
- ・使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地
- ・土壌汚染のおそれがある土地の形質の変更が行われる場合
- ・土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地
また、売買契約に際して買主側からの要望により土壌汚染の調査を行うこともあります。
そもそも、土壌汚染など、工場の跡地でもない限り心配する必要はないだろうと考える方も多いかもしれませんが、住宅街においても土壌汚染が懸念される土地があります。
よく知られているのが、クリーニング店が営まれていた土地です。
もちろん、クリーニングの取次店なら問題ありませんが、店舗において、ドライクリーニングを行っていた場合は、テトラクロロエチレンという溶剤を使っていた可能性があり、この溶剤が土壌に浸み込んでいると、土壌汚染が発生してしまいます。
また、ガソリンスタンドの跡地も様々な物質による土壌汚染が懸念される土地です。
2、土壌汚染が確認された場合は?
土壌汚染対策法に基づく調査の結果、健康被害が生じるほどの土壌汚染が確認された場合は、都道府県知事がその土地を「要措置区域」に設定してします。(土壌汚染対策法6条)
この場合、土地の所有者等は都道府県知事から汚染除去等計画を作成するように指示されます。
その上で汚染除去等計画に従って、土壌除去、土壌入替、封じ込め、立入制限、盛土、舗装などの措置を講じなければなりません。(土壌汚染対策法7条)
なお、現在の所有者等以外の者が土壌汚染の原因となる行為をしていたのであれば、汚染原因者に対して汚染対策に要した費用を請求することができます。(土壌汚染対策法8条)
3、土壌汚染が疑われる土地の売買はどのようにして行われるのか?
土壌汚染が疑われる土地については、上記のような措置が必要になる可能性があることから、売買契約の前に土壌汚染の調査を行い、その結果も併せて提示する形で売買契約が行われることが一般的になっています。
土壌汚染対策法に基づく措置が必要な土地なら、売買契約前に汚染除去等計画に基づく措置を講じなければなりませんし、措置が必要ない土地でも、土壌汚染が確認されれば、その分、土地の価値が下がることになります。
ところが、土壌汚染の調査を行わずに売買契約が締結されてしまうこともあります。
この場合、売買契約が成立し、土地の引渡しを受けた後で、土壌汚染が発覚してしまうこともあるわけですが、買主としてはどう対処したらよいのでしょうか。
4、土壌汚染について、売主への契約不適合責任の追及の可否を検討する
まず、買主としては、契約不適合責任を追及できないか検討することになります。
第一に確認すべきなのが土地の売買契約書です。
売買契約書に、土壌汚染が疑われる旨がはっきりと記載されていれば、契約時に買主が見落としていたとしても、土壌汚染が疑われることを承知の上で買ったものとされてしまうので、契約不適合責任を追及することが難しくなります。
その様なことが書かれていなければ、契約不適合責任を追及できる可能性があります。
ただ、民法に定められている契約不適合責任は、任意規定とされていますから、特約により、民法とは異なる規定に変えることができます。
売主が宅建業者でない場合は、特約により、買主に不利な条件、つまり、契約不適合責任を追及しづらい条件になっていることもあります。
もっとも、売主が土壌汚染が疑われることを承知の上で、売買契約書に担保責任を負わない旨の特約を盛り込んでいたとしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れることはできません。(民法572条)
特に、売買契約書では、責任追及可能期間を特約により短く設定していることがあり、買主が気づいた時は、この期間を徒過してしまっていて、売主に責任追及できない状態になってしまうこともあります。
このような場合でも、売主が引渡しの時に土壌汚染の事実を知っていたか、重大な過失によって知らなかった(悪意又は重過失)場合は、売主は責任を負わなければならないことになっています。(民法566条但書)
このように、売主に対して土壌汚染についての契約不適合責任を追及するに当たっては、まず、売買契約書の記載事項が非常に重要なポイントとなりますが、必ずしも、売買契約書の記載事項に拘束されるわけではないということです。
5、土壌汚染について、売主へ契約不適合責任を追及する具体的な方法
売主への契約不適合責任の追及方法としては、次の4つが挙げられます。
- 1、履行の追完請求
- 2、代金減額請求
- 3、損害賠償請求
- 4、売買契約解除
土壌汚染の場合は、履行の追完請求として、まず、売主側に、土壌汚染の調査や除去工事を求めることが考えられます。
売主側がこれに応じない場合は、売買代金の減額を求めたり、買主側の負担で土壌汚染の調査や除去工事を行った上で、その費用を売主側に損害として賠償請求することになります。
もちろん、土壌汚染の程度が深刻で、買主側で想定していた土地の使い方ができないということであれば、売買契約の解除を求めることも可能です。
6、契約不適合責任の追及が難しい場合
責任追及可能な期間が過ぎていて、売主の悪意又は重過失を立証できない場合は、契約不適合責任の追及は難しくなります。
この場合は、信義則上の説明義務違反を追及できないか検討することになります。
例えば、次のような事実を立証できれば、裁判でも有利になる可能性があります。
- ・これまでの土地の利用方法から土壌汚染の可能性を認識できたはずなのに売主や仲介業者が黙っていた。
- ・都道府県等から土壌汚染の可能性を指摘されていたのに売主等が調査も行っていなかった。
- ・買主が売買契約時に、土壌汚染の可能性につき、念押ししたのに、売主や仲介業者が隠ぺいしていた。
このような場合は、信義則に基づき、損害賠償請求をできる可能性があります。
7、不動産売買における土壌汚染のトラブルの解決はプロの弁護士へご相談ください
売買契約を締結し、引渡しが行われた後で土壌汚染が発覚すると、買主側としては、調査費用や汚染除去等にかかる費用を負担しなければならないことになり、大変な損害を被ってしまいます。
しかも、責任追及期間を制限する特約等により、契約不適合責任の追及が難しくなることもあります。
ご相談が遅れると、その分、土壌汚染のトラブルを解決することが困難になります。
当事務所にご依頼いただけば、様々な対応策を検討したうえで、ご相談者様の納得のいく形での解決を目指します。
