地代増額を求められた
土地を借りている場合、土地所有者から地代の増額を請求されるケースがあります。
増額請求をすんなり受け入れる方もいますが、地代の増額は要件を満たしていないと認められませんので、借地人にとってすぐに増額に応じる必要はないのです。
そこで、本記事では増額請求時にどのような対応や交渉を行うべきかを解説します。
地代の増額請求ができる要件について
まずは土地所有者の増額請求が可能となるケースはどういうものなのかについて確認しましょう。
基本的には以下の3つの要件を総合的に考慮して、増額請求が可能かどうか検討されます。
① 「土地に対する租税その他の公課の増減」がある
→ つまり、固定資産税・都市計画税などが増額された場合
② 「土地の価格の上昇もしくは低下その他の経済事象の変動」がある
→ 土地価格の上昇、または高度経済成長など経済情勢の変化があった場合
③ 「近傍類似の土地の地代等と比較して不相当」である
→ 周辺地域の類似の土地と比較して、地代が著しく低い場合
なお、賃貸借契約書に「地代増額を一定期間行わない旨の特約」がある場合には、地代の増額を請求することはできません。
地代増額を求められた際に借地人がすべきことは?
借地人は土地所有者から増額を求められた場合、以下の準備をしておくと良いでしょう。
① 賃貸借契約書の地代に関する記載をチェック
まずは賃貸借契約書をチェックし、地代の値上げに関する記載がないか見ましょう。
一定期間は地代増額を行わない旨の記載があれば、その期間内であれば増額に応じる必要はありません。
ただし、定められた期間を超えた場合は増額が可能となるため気を付けましょう。
その他、地代の値上げに関する記載があれば、その内容に沿って地主との交渉を進めます。
② 周辺の土地価格について確認する
地代の増額請求は周辺の土地価格等の上昇があれば可能となります。
そのため、事前に周辺の土地価格や賃料等を確認し、土地所有者からの増額請求の金額が適正であるかチェックしておきましょう。
地代増額で地主と交渉する際の注意点
実際に土地所有者と地代増額で交渉する際には、以下の点についても注意する必要がありますので覚えておきましょう。
① 冷静に落ち着いて話を進める
まず交渉時は落ち着いて、冷静に話を進めるようにします。
特に地代の増減額はお互いの利益が相反するため、話が上手くまとまらない場合もあります。
感情的になって話をすると、余計に解決までの労力や時間も掛かるため注意しましょう。
できれば事前に、自身の経済状況を示す資料や周辺の土地価格や賃料等の情報などを集め、客観的な視点から値上げの不相当さを伝えましょう。
② 地代増額が妥当である根拠を示してもらう
次に、地代増額が妥当である根拠を示してもらいましょう。
土地所有者の中には、上記3要件を満たしているか考慮せず、値上げ請求してくる方もいます。
そのようなケースに備え、交渉では地代増額が妥当であるというデータや資料を提示してもらいましょう。
特に周辺土地価格や賃料等の推移が分かる資料があると、交渉も行いやすくなります。
自身が調べたものと地主が提示した資料などを比べてチェックし、相当と判断できる地代金額について話し合ってみましょう。
③ 妥協案として様々な提案をする
最後は、妥協案を示して様々な提案を行うという点です。
お互いが食い違った意見を主張するばかりでは、一向に話はまとまりません。
したがって、時には妥協案として新たな選択肢の提案も検討しましょう。
具体的には、以下のような妥協案を複数提示するのも効果的です。
- ・値上げ額の一部は受け入れ、あとは時期を遅らせて段階的に値上げしてもらう
- ・値上げを受け入れる代わりに、更新料を免除してもらう
土地所有者も賃料収入は欲しいため、交渉決裂で借主がいなくなってしまうのは避けたいはずです。
したがって、相手の意見を一部受け入れる提案を行うと話も進みやすいでしょう。
交渉が決裂してしまった場合には?
地代増額の話し合いで交渉が決裂してしまった場合には、以下のような対応が必要になりますので、こちらも確認しておきましょう。
- ① 調停や裁判での解決を行う
- ② 裁判で地代が確定する間も、これまでの額の地代を支払う
交渉が決裂してしまった場合には、まずは民事調停を行う必要があります。
裁判所への申し立てにより調停委員会が組織され、土地所有者と借地人との間に入って、妥協点を探ります。
その調停でも解決しない場合には、裁判での判決により地代の額が決定されます。
なお、交渉決裂で土地所有者から退去などを求められたとしても、値上げ前の地代を支払って、借地人としての義務を果たしていれば応じる必要はありません。
地代増額の判決が出されるまでは、これまで通りの支払いで良いということは覚えておきましょう。
地主からの地代増額の請求は専門家にも相談しながら慎重に対応しましょう!
土地所有者から地代増額の請求があった場合の交渉方法や注意点を中心に解説しました。
請求があった場合には、安易に応じずまずは妥当な増額であるかを確認してみましょう。
ただし、適正な土地価格をどのよう考えるのかやその資料収集の話は複雑です。
裁判でも法律についての知識が必須ですので、必要であれば不動産業者や弁護士などの専門家に依頼して、慎重に対応してもらいましょう。
